2023年6月、米最高裁にて注目の判決がでる


撮影:Claire Anderson on Unsplash

米最高裁は米国を大きく揺さぶる判決をだしてくる。

2022年は、中絶規制は各州がそれぞれで判断すべきと判決をだしたことで未だ混乱が続いている。 

今年は昨年に続き、今回は政府が連邦学生ローンの債務を免除できるのか、また、1964年から続いてきた大学入学でのアファーマティブ・アクションが違憲とされるのか極めて注目が高まっている。


1.バイデン政権による学生ローン債務免除の判決

「 BIDEN V. NEBRASKA 」は、バイデン政権が実施した学生ローン債務免除(1人$1万 ※ぺルグランとは$2万)に対して、共和党州司法長官がこの行政権限は教育長官の権限を超えており、三権分立と連邦行政手続法に違反すると主張して裁判をおこしていたものだ (引用元:Supreme court

すでに Fiscal responsibility actで、米教育省に対して2023年8月29日までに連邦学生ローンの支払いを復活させるよう指示している。

学生時代に借りた学生ローンは現在、 約4500万人が抱えており1人あたりの平均債務額は$37,338だ(引用元:educationdata.org/

学生ローン支払いは再開するし、債務免除ができませんでした(バイデン大統領の大統領令は違憲でした)となると、踏んだり蹴ったりになるだろう。

ちなみに、学生ロ―ン債務免除は不可能なのではなく、米議会の権限をもってなら債務免除にすることは残されている。 Fiscal responsibility actでも、”米議会が何らかの行動をおこさない限り”と条件はつけられていることはおさえておきたい。


2.アファーマティブ・アクションに関する訴訟

・Students for Fair Admissions, Inc. v. University of North Carolina

・Students for Fair Admissions Inc. v. President & Fellows of Harvard College

ハーバード大学とノースカロライナ大学に対する訴訟は、高等教育機関が学生を集める際に人種を考慮することを認めている長年の判例を覆し、大学入試の決定におけるアファーマティブ・アクションを廃止するよう求めるものです。 Students for Fair Admissions (“SFFA”)は、Blumによって設立された原告で、ハーバード大学の人種を考慮した入学政策は、1964年の公民権法に違反し、アジア系アメリカ人志願者を違法に差別していると主張しています。SFFAは、ハーバード大学や他の大学が志願者の人種を考慮すること、あるいは知ることさえも禁止することを求めている。

3.ゲリマンダに関する訴訟( Moore v. Harper )

この訴訟は、NC州の州最高裁に却下された同州の共和党議員らによって上訴された党派的なゲリマンダ(選挙区割り)に対する訴訟。NC州州最高裁に拒否されたことに対する反論として、独立州立法理論(independent state legislature doctrine)に違反していると共和党議員は主張している。

州の三権分立(チェック&バランス)を考えれば、州の司法が判断したことについて連邦の最高裁が介入することが重要な意味をもつ。

仮に訴訟をおこした共和党議員の主張が通れば、州の議会議員に並外れた権力を与える事を意味する。その結果、州最高裁判所は、連邦選挙において、州法が州自体の憲法に準拠しているかどうかを判断する州裁判所の権利を妨げることになる。 連邦選挙の権限は、州議会の議員になるため、彼らが規定する選挙法は、州の最高裁、州の長官、州の選挙当局がチェックできなくなることを意味する。そもそもなんでこの裁判を却下しないで最高裁が審理に持ち込んだかになるが、少なくとも4人の判事の審理すべきと考えたということを意味する。最高裁は、最低で4人が審理するに値すると考えなくては取り上げない。ちなみに、2019年に党派ゲリマンダーを評価するための連邦政府による基準は存在しないと米最高裁の判事が発言している。基本的にゲリマンダを評価できる正当な基準が連邦憲法にはないということだ(引用元: The Brookings Institution


4. LGBTQへの保護(303 Creative LLC v. Elenis)

Webデザイン事業を営むスミス氏は、顧客の依頼で同性婚の結婚式のWebサイトを作成してほしいと依頼された。しかし、スミス氏はキリスト教信仰のため、自らの信条に背くような行為はできないと拒否した。これに対して、顧客側がコロラド州の反差別法(Colorado’s Anti-Discrimination Act )は、公衆に開かれた事業者が、人種、性別、性的指向、宗教、その他の特定の特徴を理由に商品やサービスを拒否することを禁じているため訴訟を起こしたものだ。スミス氏の代理弁護をしている反LGBTQ団体であるADF(Alliance Defending Freedom)の弁護士は、一般大衆が読むことのできる媒体で仕事をしている人に、好ましくないと思っている作品をを作ることを強制できる法律はない、主張している。憲法修正第1条の部分である。

これもどのような判決がでるかによって、影響が大きい(引用元:VOX